ガスハイドレートを利用した海底堆積層におけるCO2貯留
CO2 sequestration in form of hydrate under seafloor
現在、地中貯留は実用化に向けて盛んに研究が行われているものの、実用化には、CO2貯留量の拡大、貯留コストの削減、CO2漏洩リスクの低減といった解決すべき問題が残されている。そこで、本研究では、これらの問題を解決するため、ガスハイドレートを利用することで海底下へCO2を化学的に貯留する新たな地中貯留システムを提案する。
海底下では高圧・低温条件となるため、海底下の堆積層にCO2を圧入した場合、層内の間隙水と反応し、容易にCO2ハイドレートが生成する。海底堆積層において、特に砂層では、浸透率が高く、間隙水とCO2の接触面積が広く、また間隙体積が大きいため、効率よく大量のハイドレートが生成すると考えられる。
本貯留法では、CO2排出量が最も多い石炭火力発電所の排ガスから分離・回収したCO2+N2混合ガスを、圧入井により水深1000mの海底面から500mの深さまでの水飽和層に圧入し、ハイドレートを生成させる。ガス圧入の際、ガスは浸透率の高い砂層へ選択的に流入し、層内では水不飽和領域が形成され、ガスフロントが出現する。また、ハイドレート生成により、生成フロントが出現し、生成フロントの進行で、貯留領域が拡大する。このガスフロントの進行速度が生成フロントより遅くなるとハイドレートによる閉塞が起こり、サイトあたりの貯留量が激減してしまうため、ハイドレート生成のインヒビターとしてN2ガスを混入する。
 このように、海底堆積層内にハイドレートを生成させることで貯留層自体の浸透率が減少し、漏洩リスクの低減を図ることが可能となる。今までの研究で、実際の模擬砂層を用いてCO2ハイドレートの生成挙動やN2混入による閉塞回避効果を確認しており、また本システムの経済性評価では、帯水層貯留と比較すると、日本周辺海域における貯留可能量は約2倍、貯留コストについては約15%削減可能である。
Image of proposed system
乾 正幸 (D2)
Image of CO2 sequestration in the form of gas hydrate under seafloor