海洋は宇宙と並ぶ人類のフロンティアです。 特に日本のように国土が狭く、地下資源の乏しい国では、空間として、資源の宝庫として、 海洋は大きな魅力を秘めています。従来、人類の海洋開発は沿岸域に留まっていましたが、 近未来には近海や遠洋・深海に広がっていくことが考えられます。ところがご存知のように、 沿岸域で人類がこれまでしてきた開発という行為は、必ずしも自然との調和を図ったものでは ありませんでした。かと言って、経済発展や資源・エネルギの確保を無視して、環境問題のみを 議論することも真の人類の発展とはなり得ません。そこで、自然環境との調和を積極的に 考慮した調和工学的開発を,海洋を舞台に展開することを目標にしています。
海洋における局所的な人類活動が、小さくは湾内(数10kmスケール)や、 大きくは近海域(1000kmスケール)にどのような影響を及ぼすかを予測するための、 CFDを用いたシミュレーション法を開発します。この際問題となるのは、局所的な3次元性と、 大域的な2.5次元性です。後者は、海洋の鉛直スケール(数10m〜数km)が湾内や近海域の 水平スケールに比べ大変小さいことに起因するものです。そこで人類活動拠点付近の数100mスケール でのfull 3D解析法と、その外側の静水圧近似の多層モデルを結合させることを計画しています。 これら2つの解析法は時間・空間スケールが大きく異なるため、その結合には工夫が必要となります。
(九州大学大気海洋環境システム工学専攻流体環境学・経塚教授と 東京大学新領域創成科学研究科環境システム学多部田助教授との共同研究)
メンバー:殿城賢三(M2)
太陽光が届くのは表層のみ(有光層)で、ここで植物プランクトンの生産 (一次生産)が行われます。しかし、低緯度海域では温度による強い成層ができているため、 深海水と表層水は混じり合うことが無いため、窒素やリンなどの栄養塩が豊富な深海水との 混合がなく、低緯度成層海域は「海の砂漠」となっています。 例外がエルニーニョで有名なペルー沖で、沿岸湧昇流によりアンチョビーの大漁場と なっていますが、そのような海域は全体の1%に過ぎません。そこで人工的に湧昇流を 起こしたり、陸上からパイプラインで栄養塩の補給をすることで一次生産を高め、 ひいては高次の生産力(魚類)を増大させ、来る世界の人口爆発に備えて 海洋食糧生産の拡大を図るという計画が世界的に考えられています。 本研究室では、気泡プルームを用いた湧昇流やパイプラインから供給された栄養塩の海洋中での 移動を数値的・実験的に調査し、有用性・経済性・効率化についての研究を始めました。
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メンバー:佐藤 圭(M1)