応用流体力学及び演習

C3 可視化いろいろ(1)

 

カルマン渦列の可視化とストローハル数の計測

 

1 カルマン渦列

完全に没水した円柱のまわりの流れは、レイノルズ数

                                                                                     (1)

によって以下のように区別される。ここでは水の動粘性係数()、は流れの速度、は円柱の直径である。

 

 

流れは定常で、ポテンシャル流に近く、流線は上下左右対称である。

 

流れは定常で、円柱の後方に上下対称な一対の双子渦ができる。

 

渦対は振動し、いわゆるカルマン渦列が形成される。流れは層流である。

 

境界層は層流を保つが、後流ではカルマン渦列は乱流化する。

 

境界層も乱流化し、剥離点が後方へ移動する。後流は完全に乱流状態であり、渦の規則性は失われる。

 

図1 円柱まわりの流れの概念図

 

2 エオルス音

カルマン渦列はレイノルズ数の範囲ではかなり規則的であるため、特定な周波数を持つ。この周波数(単位Hz=1/sec)を円柱の直径と速度で無次元化したものがストローハル数

                                                                                      (2)

である。文献によるとレイノルズ数がまではストローハル数は約0.2で一定となることが知られている。カルマン渦の周波数が、人間の可聴音の範囲(2020000Hz)になると、いわゆるエオルス音を発生する。夜のヨットハーバーに係留されたヨットのロープからの物悲しいピューピューという音や、高速走行する車に積んだキャリアのパイプなどから出る騒音もエオルス音である。適当に直径と速度と与えてカルマン渦の周波数を計算し、可聴音であることを確認せよ。また野球のバットを振ってビュッと音をたてるためにはどのくらいの速度で振ればよいか概算せよ。レイノルズ数が以下であればストローハル数は0.2としてよい。空気の動粘性係数はとする。

 

3 可視化実験

回流水槽を用いて、レイノルズ数の範囲のカルマン渦列を可視化する。可視化は、水中に流れに垂直に設置した3本の円柱(アルミ棒)に一様流をあてた時に円柱後方にできる渦を、染料を流して観察する。

 

4 カルマン渦の周波数の測定

次に実際に、いくつかの速度における様々な円柱からのカルマン渦列の周波数を測定してみよう。手法は2通り、自分で体感することと横力の計測である。

(1)        体感

11本のアクリル棒を持ち、流れの中に突っ込んでみる。カルマン渦の周波数と片持ちのアクリル棒の固有周波数が近づくと振動を大きく感じることができる。持つ場所や水中の長さを変えて周波数を数えてみよう。

(2)        横力の計測

回流水槽の上に設置した2分力計で流れ方向の力(円柱の抵抗)と流れに垂直な報告の力(横力)が測定できる。力による変形で2分力計の内部の回路が歪むことで、力をアナログ信号として検出し、それをデジタル化してコンピュータに取り込み、力と周波数を記録する。

 

5 レポート

レポートは2の問題の解答に加え身近なエオルス音の例を挙げること及び、34の実験の目的・実験法の説明・実験結果と考察についてまとめる。実験結果は、横軸レイノルズ数・縦軸ストローハル数のグラフとしてまとめること。締切りは来週のこの時間。

以上