1997618

計算流体力学特論

佐藤 徹

 

解法のアルゴリズムと格子

 

 

  1. 非圧縮ナビエ・ストークス方程式の解法

 

 

MAC type FDM, FVM, FEM 非定常・(定常)staggered

SIMPLE type FVM 定常・(非定常)staggered

擬似圧縮法 FDM, FVM, FEM 定常・(非定常)cell-centred

 

  1. Original MAC Method (Marker and Cell)
  2.  

    (1)

    (2)

    (2)式をSOR法で解いて、(1)式により速度を更新する。陽解法であるのでに制約(クーラン数、拡散数)がある。定常問題も非定常解法の収束解として求めるため、計算時間はかかる。移動境界問題など本質的に非定常な問題に適している。

     

  3. SMAC Method (Simplified MAC)
  4.  

    (3)

    (4)

    (5)

    ここでである。の境界条件は与えられないため、速度・圧力同時反復法により(4)式と(5)式を同時に反復する。

  5. HSMAC Method (Highly Simplified MAC)
  6.  

    SMAC法のPoisson方程式(4)を以下のように近似手法により解き、計算時間を短縮する。

    (6)

    (7)

    速度・圧力同時反復法でステップでの速度が連続の式を満足すれば、途中の圧力解法が近似であっても問題ない。

     

  7. 速度・圧力同時反復法

 

(5)式の反復解法として擬似時間発展を考える。

(8)

ここでは擬似時間ステップであり、残差緩和法の緩和係数に相当する(従っての上限はに関する拡散数で与えられる)。は反復回数で、0になった時(数値計算ではある小さな値より小さくなった時)収束解が求まり、同時には連続の式を満足するとなる。圧力の2階微分が無くなったため、圧力の境界条件は不要となる。

 

(e) SIMPLE Method (Semi-Implicit Method for Pressure-Linked Equation)

 

離散化したNS式を書き直すと以下のようになる。

(9)

(10)

まず適切なの推定値で上2式を反復的に(陰的)に解く。この時線形化にため各係数は更新しない。従って(9)式と(10)式は完全なカップリングとならず、この意味で準陰解法である。ここで求まる速度は連続の式を満足しない。そこで圧力補正を離散化したPoisson方程式

(11)

から求め、以下のように速度を補正する。

(12)

(13)

非定常解法も研究されており、陰解法であるためは大きめにとれるが、解の精度についての議論もある。

 

  1. 擬似圧縮法 (Artificial Compressibility Method)

 

非圧縮NS式を解くことの困難は、速度は時間発展的であるのに対し圧力は境界値問題であることにある。一方圧縮NS式は速度・圧力ともに時間発展的であることを利用し、擬似的な圧縮性を導入しすべての未知数を時間発展的に解く。但し、定常解は非圧縮性を満足するが、途中の時間での速度場は連続の式を満足しない。

(14)

(15)

主に陰解法で解くため反復の高速化は必須で、Newton法などが用いられる。非定常解法も研究されており、陰解法であるためは大きめにとれるが、移動境界問題など小さなが要求される場合には計算時間がかかる。

  1. 変数配置とchecker board
  2.  

    圧力を解いてその勾配から速度を更新する際、速度と圧力が同じ点で定義されていると圧力の振動を許してしまう。今、1次元で考えると

    (16)

    となり、を使わないため速度場に振動を起こすことなくの1格子毎の振動を許す。速度場が振動しなければ、は満足され圧力のPoisson方程式を解く上での振動を抑制できない。2次元では1セル毎のchecker board状となる。

     

    これを回避するには、圧力のコントロールヴォリュームの境界上に速度を配置する必要がある。従って速度と圧力の定義点は千鳥格子(staggered grid)状となる。擬似圧縮法では全ての変数を同じ点で定義できる(cell-centred)

     

  3. 境界適合格子

 

通常、解きたい流場の境界は任意形状をしているため格子は物体や外部境界に沿った曲線となる。この時微分(差分)は曲った格子に沿って計算し、chain ruleによりデカルト座標での微分に直す。

(17)

FVMでは以下のようになる。

(18)

ここでは曲線座標の方向の面積ベクトルのデカルト座標での成分であり、(17)式のを意味する。

 

ベクトル変数(速度)をデカルト成分で表現すると、格子が90°回転した時、staggered変数配置では速度の発散(連続の式)の精度が悪くなる。以下のような改良が考えられるが、各々固有の問題がある。