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QICSプロジェクトqics project

QICSプロジェクトHP和訳抜粋
1.  QICSプロジェクト概要
 1-1.  QICSプロジェクトとは
 1-2.  プロジェクト概要
 1-3.  プロジェクトの目的と最終目標
2.  科学的概要
 2-1.  CO2の貯留層から海底または地表への移動(ワークパッケージ1)
 2-2.  CO2漏出の影響予測及びモデリング(ワークパッケージ2)
 2-3.  CO2漏出による海洋地球化学サイクルへの影響(ワークパッケージ3)
 2-4.  CO2による海洋生態系に対する影響(ワークパッケージ4)
 2-5.  CO2漏出のモニタリング(ワークパッケージ5)
 2-6.  海底のCO2流動の予測・緩和(ワークパッケージ6)
3.  CO2漏出実験
4.  国際共同研究

4. 国際共同研究

QICS(二酸化炭素地中貯留による生態系への影響の定量化とモニタリング)は、英国自然環境調査局(NERC)からの資金によるコンソーシアムプロジェクトですが、さらに日本の研究者が結成したコンソーシアムとも連携しています。 QICSの第一の目的は、CCSからのCO2漏出を検知する手法を確立し、またCO2漏出により生じ得る環境影響を理解するための知識を、政府、産業、規制当局、環境保全責任者や一般の方々が利用できるような形で深めることです。 英国と日本の連携は、2010年1月に英国大使館が主催したワークショップをきっかけに、大使館の科学・イノベーション部門が促進してきました。
QICSプロジェクトの第一の科学的目標は堆積物や水柱内、そして大気中へのCO2の流動を左右する流束とメカニズムに関する理解を深め、CO2の漏出により生じ得る海洋生態系への影響とその後の回復力を理解し、漏出を検知するためのモニタリング技術を評価することです。 QICSは、海底の堆積物内へCO2を放出する初めての試みを中心とした、幅広いモデリングと合成テクニックを用いる多くの学問領域にわたるプロジェクトです。QICSは2014年まで継続されますが、実験ではすでにいくつかのまったく新しい知見が得られています。例えば、大半のCO2は気体としてよりも溶解した状態で現れたこと(予想とは逆の結果)、物理的な流動経路は堆積物の地球化学的反応と同様に複雑であったこと、比較的少量のCO2が放出された場合には生物学的影響は限定的で回復も早いこと、などが挙げられます。 QICSは海洋システムの反応を理解するには、地球物理学、化学、生物学や流体力学などの多くの学問領域にわたる方法を、それぞれ複数の手法で観測することが必要であることを示しました。そのため、日本のコンソーシアムの参加は科学的な努力を約2倍にすることができ、このプロジェクトにとって大きな変化をもたらしました。

QICSでの英国と日本の連携
日本の研究者コンソーシアムの貢献により、英国では利用できない幅広い専門技術の活用が可能となり、相互利益をもたらしています(図1〜3)。
・バッテリー式の小型潜水艇による、海底から2m上層の海水中のpH、二酸化炭素、クロロフィル量、酸化のマッピング
・船舶に搭載したセンサーによる、放出サイト上部の海面直上の大気中のCO2濃度のマッピング
・海底に突き刺す突き刺し型センサーによる、海底下のpH、酸化、化学組成の計測
・化学組成は数値計算法によりCO2との反応を計算することにより予測
・CO2曝露のマーカーとして、QICSの放出サイトにおいて採取された化学データから、りん含有量を分析
・CO2放出に関連する海底の堆積物の硝化の底生微生物に対する影響
・CO2放出中の気泡流及び底生動物と遊泳動物(カニ、ウニ、ヒトデ、魚など)の行動のカメラによる観察


図1: アードマックニッシュ湾におけるデータ採取に利用したバッテリー電源式AUV


図2: アードマックニッシュ湾の海水中からAUVを回収する研究者ら


図3: 海底の堆積物の電位と電気抵抗率を記録するケーブルのアレイ

今後、公衆の科学理解の増進を含め、CCSに関する環境学的知識の学術交流や英国からの指導者の提供を継続する可能性は非常に高いです。 QICSプロジェクトは、再利用できるように設計した海洋放出のための設備の開発におよそ50万ポンドを費やしました。コンソーシアムの研究者は、今後「QICS 2」実験を実施することは非常に価値があると考えています。これにより、第一に操業前または操業中のモニタリングのツールを試験し、さらに流束の定量の改善(何を見つければ良いか分かったため)や影響評価における格差に対応することが可能となります。 日本のコンソーシアムは「QICS 2」に強い関心を示しており、ノルウェーや米国の研究者らからも同様の関心が寄せられています。現時点では、英国内の明確な資金の流れが存在するわけではありませんが、QICSの主任研究員らは国際的な関心表明を視野にスコーピング文書を作成しています。 2012年11月に京都で開催された第11回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-11)や国際エネルギー機関 温室効果ガス研究開発プログラム(IEA GHG)によるワークショップなどにおけるQICSプロジェクトの国際的な露出により、英国がCCSの環境関連研究において世界をリードしていることが確立されました。