QICSプロジェクトqics project
QICSプロジェクトHP和訳抜粋
1. QICSプロジェクト概要
1-1.
QICSプロジェクトとは
1-2. プロジェクト概要
1-3.
プロジェクトの目的と最終目標
2. 科学的概要
2-1.
CO2の貯留層から海底または地表への移動(ワークパッケージ1)
2-2.
CO2漏出の影響予測及びモデリング(ワークパッケージ2)
2-3.
CO2漏出による海洋地球化学サイクルへの影響(ワークパッケージ3)
2-4.
CO2による海洋生態系に対する影響(ワークパッケージ4)
2-5.
CO2漏出のモニタリング(ワークパッケージ5)
2-6.
海底のCO2流動の予測・緩和(ワークパッケージ6)
3.
CO2漏出実験
4.
国際共同研究
1-2. プロジェクト概要
増加するCO2排出に起因する気候変動は、現在の社会において最も喫緊の懸念となっています。
現時点で、英国の約90%のエネルギー需要は化石燃料によって賄われています。そして、化石燃料が今後も長期にわたり主要なエネルギー源であり続けることは、ほぼ確実だと考えられています。CO2排出を削減するための様々な方法の良い点と悪い点に関する理解を深めることは、非常に重要です。風力、波力、太陽光発電などの利用可能な代替的手法や二酸化炭素回収貯留(CCS)は実現可能であるものの、問題や制約が存在する可能性があります。本プロジェクトでは、CCSを研究の対象とし、その環境への影響の可能性を検討します。
二酸化炭素回収貯留とは?
CCSの背景にある考えは、発電の際にCO2を回収し、パイプラインにより輸送し、陸域または海域の地下深くにある地質構造へ恒久的に貯留することです。英国でCO2貯留が実施される場所の大部分は北海の岩石の下になることから、今回の研究では海洋環境に対する影響の可能性に注目しています。しかし、この研究結果は他の場所の岩層にも関連するものになるでしょう。今のところ、英国内の海底下の地中貯留許容量は、現在の英国内の発電状況下において100年分のCO2排出に相当すると推定されています。そのため、CCSによって短期〜中期的に化石燃料の利用を継続しながら、CO2の排出が少ない新たな発電技術の開発が可能になります。
この研究の必要性とは?
いくつかの回収または貯留いずれかの小規模なプロジェクトは成功裏に実施されており、技術的な課題は解決可能であることが分かってきています。また、研究によって地質構造は長期的な貯留に概ね適していることも実証されてきています。しかし、地質構造は複雑であり、地下に元々存在するガスが時折地表に漏出することが知られています。本プロジェクトの主な目的は、商業規模のCCSシステムが開発される前に、漏出による環境への影響がどのようなものかを理解することです。我々は、地質構造からの漏出の確率と形態についても調査します。
研究のすすめ方は?
これまでの研究によって、CCSシステムからの漏出は海底堆積物や海水の化学環境を変化させ、いくつかの海洋種に悪影響を及ぼすことが示されてきました。ただし、これらの種の回復力や、一度の漏出が及ぼす損害の程度については解明されていません。今回のプロジェクトでは、海水中におけるCO2の拡散の様子と、小規模で厳格に管理された人為的CO2放出に対する海洋生物群集の反応を実海域で調査します。また、生物学的・化学的影響を研究し、環境回復に要する期間をモニタリングします。この研究による結果は、異なる海洋環境でのCO2の流動 や影響を予測できるモデルの構築に寄与します。
さらに、もし貯留層の外へCO2が移行した場合の上昇プルームがどのように拡散するのかを理解するため、地層内でのCO2流動の特性を調査します。本プロジェクトで計画されている内容は、CCSのリスク評価を進展する上で必要となる科学的理解を大きく深めることができます。そして、CO2の貯留層から生態系までの経路を予測するモデルを開発します。このモデルは、計画段階のCCSシステムに対して利用することができます。万が一漏出が起きた場合の早期検知を確実にするために最適なモニタリング手法を提言することが、このプロジェクトの重要な成果となります。
最終的には、我々のデータと他の研究プログラムのデータを比較することで、CCS関連の漏出が起こる確率とその影響を、CO2排出が削減されなかった場合の環境影響と対比することが可能となります。
この研究のデータを利用するのは誰?
本プロジェクトは、成果として得られる情報が全ての方の役に立ち、理解でき、入手可能なものとなることを確実にするため、産業界、政府、そして一般の方々を含む利害関係者などの、このプロジェクトに関心を持つ団体や組織とともに実施します。
プロジェクトの参加者は?
私達は、自然環境調査局(NERC)及び産業界の寄付による資金を受ける学術研究所のコンソーシアムです。私達の役目は、アドボケイトや他の特定のCO2削減戦略となることではなく、英国全体の便益として十分な情報を得た上で、計画や操業を可能にする知識を発展させることです。
・プリマス海洋研究所 (Plymouth Marine Laboratory)
・英国地質調査所 (British Geological Survey)
・デット・ノルスケ・ベリタス (DNV: Det Norsk Veritas)
・ヘリオット・ワット大学 (Heriot-Watt University)
・英国国立海洋学センター(National Oceanography Centre)
・スコットランド海洋科学協会 (SAMS: Scottish Association for Marine Science)
・サウサンプトン大学 (Southampton University)
・ブリストル大学 (University of Bristol)
・ダラム大学 (University of Durham)
・エディンバラ大学 (University of Edinburgh)